バルドー、モンロー、サッシャ・デイステルの一枚のEPから想うこと |
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2019年 02月 11日
レコード・マニアはどこどこの地方の観光地に行ってもそこにレコード屋があれば、そのドアをのノックせずには入られない。観光そこそこに。そんでジャズ好きとならば、そのレコードの中から、やはり、ジャズレコを求めるのは当たり前。だが、そこに並ぶ商品のジャンルから、ニーズに答えられないお店も出てくる。でも、なんか買って帰りたい。手ぶらで帰りたくはない。おい、観光は? この時点でそれはもうどうでもいいようになってる。なんかないかな。こうなると、そこにある商品から、強引にジャズに結びつけようとする。 とある地方のレコード屋さん、サッシャ・ディステルのこのEP盤。もちろん、買う前からここにある音楽はジャズではないことはなんとなく理解できていた。恐らくはフレンチ・ポップス。シャンソン。が、オールジャンルのシングル盤の棚からこれを見つけた時は小さいガッツポーズがでた。 何しろ、サッシャ・ディステルだ!ジャズ・ファンなら誰もが知っているだろう。かの名盤。ジョン・ルイスとの共演盤。アフタヌーン・イン・パリのギター・リストだからだ。 ぼくはこのレコードが好きで、米アトランテック盤、英ORIOLE盤、仏ヴェルサイユ盤の三枚を持っている。オリジナルのヴェルサイユ盤はジャケットおんぼろ、おまけに前持ち主のセンスのないサイン、盤質Cというようなものだが。 ぼんやりと浮かぶように写るエッフェル塔をバックにチェスターコートを着たジョン・ルイスとトレンチコートを着たサッシャ・ディステルが談笑しながら歩く姿が印象的なジャケット。巴里っ子、ディステルの地元巴里案内。二人ともポケットコートに手を入れていることから、12月の冬のパリの寒気が伝わってくる。そう、こんな寒い日にはなんとなく手がのびるレコードだ。 "AFTERNOON IN PARIS" JOHN LEWIS & SACHA DISTEL だが、このレコード。それほどの名盤かと言われるとなんとも心もたない。例えば、M・J・Qの一連の作品と比べたらどうか、そのトータルなアルバムの出来としては比べようもない。ジョン・ルイスがササっと作ったオリジナル一曲。あとは、テキトーにスタンダードをちりばめてというような手抜き感覚が見えないこともない。例えば、パシフック・レーベルの”グランド・エンカウンター”などの名盤。ギター・リストとの共演ならばバリー・ガルブレイスとのアトランテックから発売されたジョン・ルイスのソロ・アルバム、気品あふれる格調、芸術的なそれ。それらに、比べるとこの作品はどこか一発取り的な、やってみました的な軽いノリを隠しようもない。 が、だ。ジャズというのは何かが起きる音楽でもある。決して予定調和には進まない。まるで、人生のごとく。 で、ここに三人目、第三の男が加わる。バルネ・ウィランこの当時、なんと19歳。この時点でこの男の実力を誰も知らない。その朝、ママンが作ってくれたオ—トミルの朝食の後、上品なコロンをなでつけてスタジオに現れたかのような男。〝ウイランは身だしなみをととのえ終わるところだった”〝うたかたの日々"、"日々の泡"そんなセリフとワードが似合いそうな男。パリのしだれ柳。ビル・パーキンスくらいのテナー吹きなら問題はないが、シロートの白人テナー吹きじゃ、ジョン・ルイスと共演。やめとけよ、兄ちゃんケガするぜってもんだが。 しかし、この男がすごすごと音を出し始めるなやいなや、場は一変する。空気が変わる。そのイメージには似合わない野太い音の感覚。このレコードの音を調整された良いシステムで聴いたならば、腰を抜かす人もいるとかいう話しも。 ジョン・ルイスもおっとなる。予定調和の品のなかに、何気ないパリの午後の散歩に、熱いエモーショナルが、熱いジャズの想いが投影される。忘れかけていたその情念。思いの堰を切ったように、しり上がりに調子をあげていく、パリのしだれ柳ことバネル・ウイラン。白人だの坊ちゃんだのを忘れさせるその黒い感覚。さっきのコロンはどうした。という記事を以前書いたのだが。(2016年12月23日の記事です) その時、このレコードについてネットで調べていて気付いたのだ。 どうやら、このヴェルサイユ・レーベルのオーナーはレイ・ヴェンチュラという人でバンドマンで興行師で、恐らくはパリのショービジネスの顔役という感じの人だったのだろう。そのヴェンチュラの甥っ子というのが冒頭のサッシャ・ディステルだったという事実を知ったわけである。 つまりは、パリの大物プロデューサーは自分の甥っ子の為にこのセッションを用意した。のではないかと。ジョン・ルイスは大物ゆえにその要請をなんとなく断れなかった。だが、そんな約束をしたことさえ、レコーディング当日まで忘れていた。だから、レコーディング直前まで、なんの準備もしてこなかった。なんのアイデアも持ってなかった。 そこに、第三の男が現れて・・・。 そんな妄想が次から次へと沸いてきたのだった。 さらにまた、その記事のなかで、何気なく、二人がブリジット・バルドーと、マリリン・モンローの話しをする場面を書いた。 この当時、バルドーは映画で共演したことがきっかけとなり俳優のジャン・ルイ・トランティニアンと交際したことから、18歳の時に結婚した映画監督のロジェ・バディムと離婚していた。そのニュースが話題をさらっていたから。 で、ネットの情報によると。なんか下世話なゴシップ記者にでもなったかのような気がしてくるが。どうやら、サッシャ・ディステル君、バルドーと一時、恋人同士のような関係にあったとか、なかったとか。 このレコードの、 そんな、サッシャ・ディステルとバルドーの関係。 パリの大物プロデューサーは自分の甥っ子の関係にあり、甥っ子の為に、このセッションを用意。 この二つ、それは、あくまでもネット情報であり、それの確証がとれない部分もあった。ウラをとりきれてない。そんなモヤモヤを抱えていたのだ。 そして、ここで、冒頭のサッシャ・ディステルのEP盤の話しに戻りたい。 地方から家に戻り、ぼくはさっそく、このレコードをジャケットから取り出してみた。すると、そのレーベルは、なんと、、やはりのあのヴェルサイユ・レーベルだったのである。やはりこの人のレコードは叔父さんのレーベルから出ていたのだ。やはり、その関係は事実だったのだなと。 下は、ヴェルサイユ盤、”アフタヌーン・パリ”のレーベル。同じだった。 さらにはまた、このEP盤のタイトルが、”BRIGITTE”なわけである。ブリジット、つまりはブリジット・バルドーなわけである。たはは、これって、まさかの求愛ソング。フランス語がわからないからなんとも言えないけど、曲終わりで、”ジュテーム、ジュテーム”って何度も出てくるから間違いないだろう。 自分の甥っ子を売り出さんとするために、周到に用意されたセッション。パリのアメリカ人。米ジャズと仏ジャズの邂逅、融合。だが、そこで、いちばん光を放った男とは第三の男、バルネ・ウイランだった。誰が、あの男を呼んだ。オマエか、いや、叔父さんでしょう? いや、ワシ知らん。なんか知らんまに来ていた。そんなわけないやろ。 仏の名ギターリストはジョン・ルイスと邂逅の後、この二年後に、ポップスも歌えるシンガーとなりフランスのセックス・シンボル、超絶いい女、バルドーに求愛ソングを贈る。 いや、なるほど。昨夜、深夜、マジマジとこのEP聴いていたら、ジュテーム、ジュテーム、~、なんかいい意味でアホらしくなってきたよ。オレって真面目に生きすぎていやしないか。 あと、もう一つ、マリリン・モンロー。 この間、久保田二郎の「極楽鳥ただいま満員」という本を読んでいて、ある事実を知る。まさに、ジャズは本棚に在りだ。または、ジャズは本音と建て前に在り。 ここに要約する。 著者、久保田二郎氏は、ビリー・ワイルダー監督の映画”お熱いのがお好き” が、好きで、というレベルではないな、もっと、何かこう陶酔に近いリスペクト感のようなものをこの作品に持ってらして、このエッセイのなかで13回観は観たと書かれている。 それでだ。 ジョン・ルイスが日本に来日した時に、ジャズ評論家、TVプロデュサー、久保田さんの4人でジョン・ルイスをお座敷でスキヤキ鍋を囲むこととなった。久保田さんは、ジョン・ルイスが、子供の頃から映画好きで、大きくなったら映写技師になりたいと思っていたという記事をどこかで読んで知っていた。 まずは、ジャズ評論家の野口久光氏がジョン・ルイスに質問する。 ”あなたが一番最初に感動した映画はなんですか?” ジョン・ルイスはすこしの間もおかずに、 「オペラの怪人」です、と答える。 ここまでは、ああなるほどな。実にジョン・ルイスらしいではないかとぼくも感じる。 そして、質問は続く、 それじゃ、今まで一番気に入った映画はなんですか?と尋ねる。 すると、ジョン・ルイスは、あの謹厳な顔をほころばせて、やや、恥ずかしそうに言った。 「お熱いのがお好き」デス・・・。 そして、13回観ましたと。 いや、この事実、これにもまいった。 どうにも、あの厳粛な作品を作る、プレイするジョン・ルイスの生真面目なイメージと、このマリリン・モンローの出世作だろうなこれのイメージがどうにも合わない。から、面白い。 で、これらの事実から、そう事実だ。ぼくが思うのはだ。 12月の冬のパリのセッション、その傍らにだ、ジョン・ルイスとサッシャ・ディステルは間違いなく、バルドーとモンローの話しをしたに違いないと思うのだ。 いいレコードは様々な思いを連れてくる。一枚のレコードを聴きながら、ああだの、こうだのと考える時間は、やはり、最高に面白い。
by senriyan
| 2019-02-11 15:54
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