きわめてブルーノートらしくないブルーノートの本命盤 |
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2017年 10月 16日
1958年3月9日、ちなみに日曜日。ニュージャジーはハッケンサック、ヴァン・ゲルダー・スタジオ。 不遇時代、マイルスに手を差し伸べたアルフレッド・ライオンの恩義に報いるため特別に用意されたレコーディング。 集まったメンバーは5人。マイルス・ディヴィス、そのマイルスの契約上の理由からリーダーとなったジュリアン・キャノンボール・アダレイ、ピアノにハンク・ジョーンズ、ベースのサム・ジョーンズ、そして、ドラムにアート・ブレイキー。 泣く子も黙る真の名盤。究極の一枚、棺桶盤。無人島でどうすりゃレコードが聴けるのか分からないが無人島レコード。 だが、このアルバム、うんいや、実に、いい意味で、らしくないのである。 何を、senriyan、オマエごときアンポンタンにこの名盤の深い意味など到底理解できるか!顔洗って、ヒゲ剃って、お百度参りしてから出直して来い!(アンポンタンって最近聞かないなあ、現代日本死語辞典のいっちゃん候補だな) でもまあ・・・。 まず、キャノンボール・アダレイが実に冴えている。まあ、リーダーなのだから当然なのであるが、それにしてもキレている。いつものキャノンボール・アダレイとはまるで違う次元をいっている。 とくに、静を表現するマイルスに対し、エモーショナルな表現で絡んでいく、冒頭”autumn leaves”のソロからして何かが違う。いつものリバー・サイドのファンキー・ジャズ路線では聴けない、格調、艶、只ならぬその気配。 私は、リバーサイドのキャノンボール・アダレイこの路線が嫌いではない、値段が安いこともあり、しこしこと集めているが、リバー・サイドに彼のこうしたソロの側面は見ることはない。 そりや、フアンキー・ジャズなんだから当然だろ、こっちは、帝王マイルスだぜ。確かに、その通りではある。そうだととも思う。もちろん、キャノンボール・アダレイ、そのルックスからは想像しがたい芸術性をもったプレイヤーだということも知っているつもりである。ビル・エヴァンスと共演した”know what i mean?”などがいい例である。 だが、このアルバムでのキャノンボールは明らかにモノが違う。ハッキリ言って別人28号である。 このアルバムのメンバーの人選はマイルスが行ったことになっている。が、このサム・ジョーンズだけは、キャノンボールの提案があったと思われる。なぜなら、サム・ジョーンズはキャノンボールのバンドのメンバーなのだから。しかし、ベースを力強く弾き、どちらかと言えば、繊細な表現を苦手とするこのベーシストだったはずの、サム・ジョーンズもやはり、この作品では、何処か、らしくない。 だが、しなやかで、緩やかに、バウンドするリズムがこの作品を朱塗り木箱ような落ち着いたものにしている。例の”autumn leaves”のイントロを引き継ぐ形で、始終行われる、ズンダカ、ダンダン、ズンダカ、ダンダン・・・ベースのリフレインその背景には、何処か追憶を引きずるような感覚を感じずにはいられない。 そう、彼、いつもは、フアンキー・ジャズのベース・プレイヤー。 で、ハンク・ジョーンズ。なんと、この日、この引っ張りだこのこのピアニストのスケジュールが空いていた。日曜日だったからか、いや、ジャズ・ミュージャンにそんなものは関係ないだろ。モンクもクリスマスに仕事した。で、ケンカした。 大手レコード会社で仕事する彼には、ブルー・ノートのギャラはそれほど、魅力あるものではなかっただろう。マイルスの依頼だったからか、このアルバム、ここにもまた男気が潜んでいる。 ここでのハンク・ジョーンズのプレイは、らしくないわけなどない、いや、実に彼らしい。曲を完全な形に仕上げる力量がパンパではない。素材の良さを充分に生かす料理人の腕前。 ここにある、らしくなさは、実はマイルスとハンク・ジョーンズの競演のらしくなさだと思っている。マイルスのピアノの椅子には、レッドがいた。ブルースならウイントン・ケリーだし、モードだったらビル・エヴァンスだ。 だが、天下の大名盤のこのアルバムの椅子にはミスター・ハンク・ジョーンズが座った。 恐らく、マイルス、”autumn leaves”枯葉の自身のイメージが浮かんだ時、真っ先に、ハンク・ジョーンズのピアノを思い出した。そんな気がしてならない。実際に、マイルスが直接電話でハンク・ジョーンズに参加の要請をおこなったことになっている。 例のしわがれ声でこう言ったかも知れない。 ”ああ、ハンクか、マイルスだ。次のレコーディングで、オマエのピアノ必要だ。そうだ、ブルー・ノートだ。そう、アルフレッドに借りを返す。・・・” そして、らしくなさ、次は、そう、アート・ブレイキーだ。 このアルバムはマイルスと、キャノンボール、サム・ジョーンズのリバーサイド組、それに、キャピトルなどで仕事するハンク・ジョーンズ。人選は極めて、ブルー・ノート色が薄いことに気付く。 そのドラム席に、ミスター・ブルー・ノート、顔役、アート・ブレイキーが加わる。 だが、このブレイキーが実にブレイキーらしくないのだ!! これは借りてきた猫である。ブレイキーはこのアルバム、始終、リズム・キーパーに徹する。深々とリズムを刻む以外、何もしない。ブレイキーがここにいることも忘れてしまう。うん、気配を消している。 かって、ブルー・ノートのカタログに、いや、彼の音楽人生でこうした例はない。ここでのブレイキーはブレイキーではない。ハッキリ言って別人28号である。 そして、このアルバム実に最大のらしくなさとは、マイルスがシャンソン・ナンバーを自身のレパートリーとして取り上げたことである。 今でこそ、枯葉はジャズのスタンダードとして有名だが、当時は、すんなりと認知されたのだろうか。おい、マイルス本気か、そんなセンチなシャンソンなんかやめてくれ、そんな声もあったのではないかという気がしてならない。 ジャズが新しくなりつつあるこの時代、このシャンソンという選曲は、曲、メンバー紹介のアナウンスもしない、客に背をむけてプレイする、スマイル無用のマイルス観とはまるで異にするように思える。マイルスのクール感とシャンソンの情感、人肌恋しさが、どうしても相違してしまうのだ。 スタジオ入りして、リーダーのキャノンボールからメンバーに最初のナンバーは”枯葉”であることを告げられる。 アート・ブレイキーはサンジエルマン通りのカフェで聴いたジュリエット・グレコのナンバーを思い出し、ひゅーつと口笛を吹く。 ハンク・ジョーンズはニヤリ笑うと鍵盤を指でさらりと撫でる。 そうして、やがて、あのイントロ(そう、このイントロも、相当に、らしくない)がはじまる・・・。 こうして、らしくないセッションは、らしくないままに、歴史を重ね、認知されて、評価されて、今日に至る。 で、ぼくは思う。人のらしくなさとは、実に、実は、その人の本音でなかろうかと。つい漏らしてしまった本音。 そう、 ジュリアン・キャノンボール・アダレイは、芸術なんて、まるで分らなかった。興味もなかった。モネとマネの違いも分からなかった。ただ、マネがモネのマネでないことは空気感で知っていた。シーエクスピアがどこの国の人間か知らなかった。フアンキー・ジャズが好きだった。そして、芸術的なキャノンボールよりも、つねに我々黒人の傍にいてくれるキャノンボール。それを多くの人がそれを求めていた。何しろ、お金になった。そして、そんな聴衆の前で、シーエクスピアが言えないようなウイットが言えた。それで、良かった。 だがだ、・・・。自身の中に、自身の音楽の中に、芸術的ともいえるそんな潜在能力を秘めていることを知っていた。彼はつねに求めていた。そんな力を引き出してくれる人との場を。 間違いなく、そんな思いを彼は、このマイルスとのセッションでそれを完全、完璧な形で発揮している。 サム・ジョーンズは、そんなキャノンボールをリーダーとするフアンキー・ジャズのベーシストだ。だが、フアンキーとは何か、彼自身よく分からないでいた。フアンキーって何? 今さら、そんなこと誰にも聞けなかった。うん、彼は、非フアンキーな落ち着いた人間だった。 ハンク・ジョーンズは、自身の音楽性がマイルスの指向する音楽とは違うものであることに重々気付いていた。自分はブルース感を売り物にするプレイヤーでもないし、コードに新たなる新感覚をもたらす弾き手ではないことも知っていた。ただ、スタンダードを、その曲の持ち味を、それを高みに持ち上げることの出来るそうした自身があった。そして、つねに、彼はそうしてきた。 だが、一方で、彼は、アメリカ中のどんなピアノ弾きよりも、マイルスの誘い、その電話を待っていたピアニストだった。 だから、その電話があった時、彼は心のなかで狂喜乱舞した。左で受話器を持ちながら右手は、ガッツポーズだった。 だが、マイルスは言った。これはオレのリーダー作ではない、リーダーはキャノンボール・アダレイだと。こんちくしょうめと思ったが参加に同意する。 野人アート・ブレイキーここでは思慮深い敬虔なるブラック・アメリカンというところか。頭を丸めた僧侶でもある。かっての日本映画の俳優たち、志村喬のイメージなどを重ねてしまう。かのジャズ・メッセンジャースが時代の荒波を乗り越え存在し続けた理由。その本質がここにもあるような気がする。 で、マイルス。 ”オマエ、シャンソンだって、フランス行ってかぶれたか、” いや、あれは、オレのレコーディングじゃない、キャノンボールのリーダー・アルバムだ。ただオレはそれを手伝っただけ。 マイルスに言い訳は相応しくない、しかし、それは事実でもある。 で、ここにマイルスの本音が存在する。 昨年、フランス、パリでの追憶。 マイルスは、間違いなく、このナンバーをプレイしたかった。このナンバーに魅了されていた。いや、半ば憑かれていた。アレンジはすべて頭のなかにあった。そこには、ハンク・ジョーンズのピアノ、深々とただリズムを刻む思慮深い経験のあるドラマーが必要だった。 そして、それは自身の過去への追憶、その深く重い扉を開けることともなった。かのエンディングの引きずるような気配が息も白く凍る夜のしじまに溶けて流れていく感覚。 それは、後年のマイルス・イン・ヨーロッパの”枯葉”には、もはや、ない。 ジャケットを担当する天才デザイナー、リード・マイルスはリーダーはキャノンボール・アダレイだと聞くやいなや、そのデザインのイメージが自身におりてくる。 キャノンボール・アダレイ18文字、マイルス・ディヴィス10文字、ハンク・ジョーンズ9文字、サム・ジョーンズ8文字、アート・ブレイキー9文字。下にいくほど、文字数が少ない落ち着きを与えるそのレイアウト・デザイン。マイルスがリーダーでトップならこの安定感は出ない。サム・ジョーンズが8文字で、アート・ブレイキー9文字だが、ここは、テクニックでカバーできる。 今回は、レタリングの文字だけで勝負だ。写真はなし、よし、これでいこう! そして、写真担当のフランシス・ウルフ。彼は、ここでも、いや、らしくない。 なんと、オレの写真はなし、ちくしょうめ、ということで、やってしまったのが、ジャケ裏のバックショット写真、なんと、笑わないはずのマイルスを笑わせてしまっている。 その絵面は、1966年の”マイルス・スマイルズ”まで待たなければいけなかったはずなのに。 で、この、きわめてブルーノートらしくないブルーノートの本命盤。タイトルだけは実に的を得ている。"SOMETHIN' ELSE" 何かべつのもの、つまりは、らしくないもの。 ”人のらしくない行いには、その人の本音がこぼれている” by・senriyan なんちて、(笑) (このブログ記事には本人の妄想と多大なる思い込みが含まれております。ご了承下さい)
by senriyan
| 2017-10-16 17:31
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