あなたまたレコード買ったのね |
プレスティッジの傍系レーベル、ムーズヴィルからの1枚である
レーベルの名どおり、ムーディなスタンダードをオルガン・テナーコンビが堂々とコテコテスタイルで聴かせる大衆和み路線の王道とも言える作品。
冒頭、これでもかとリバーブをきかせたエディ・ロックジョー・ディビスのサックスが下腹に響きわたる。録音はルディ・ヴァンゲルダー、そのオーバーなエコーはこの人らしくない。
恐らくは、コテコテ商人であるところの本盤プロデューサー エドモンド・エドワーズに言われたのであろうか。ルディ、今回はリバーブをたっぷりきかせてくれよと。
しかし、今回の話しはこのレコードの中身、音楽ではない。
このどこか意味ありげな神秘的ともいえる女性の表情をとらえたまさにmistyといえるレコードのジャケットの話しである。
実にこのレーベルのジャケットといえば、moodsvilleのレタリングだけのレイアウト(vol.1~vol.9)もしくは、アーテストの陰影がかったしぶい写真ということになる。そのなかで、この白人女性のジャケットの存在はレーベルのなか極めて異例と言える。そしてまた、この時期コテコテ物のジャケットの約束事といえば、健康的かつセクシーな黒人女性とたちと決まっているから。
音楽の話しはしないつもりだったが、このインテリジェントな、どこかの大学でドイツ文学なんかを学んでいそうな彼女のポートレイトはmistyの楽曲には相応しいかも知れないがトータルとしてはこのアルバムの内容とはかけ離れているように思う。小さな違和感。
しかしながら、このジャケットには何か知れない魅惑的な魔性が潜んでいる。いつしかそう感じるようになった。
このレコードを棚の前に立て掛け、夜一人部屋でレコードを聴いていると、彼女の視線をふと感じることがある。彼女はぼくのことを真っすぐ見ている。そしてその視線はまるでぼくの心のなかまで見抜いているように思えてくる。良いことも悪いことも。いや、、むしろ悪いことを。
彼女はやがて、静かにぼくに語りかける・・・。
あなたまたレコード買ったのね・・・・。
彼女の話しはここからはじまる。